【1・2月号】バーテンダーが酒造りに挑戦!中垣繁幸さんの岐阜発クラフト・ジントニック

岐阜市金宝町にある「BAROSSA cocktailier」の中垣繁幸さんと言えば、そのカクテルを求めて全国からファンが岐阜に足を運ぶ名バーテンダー。国内で数々の受賞歴を誇る他、2022年には「ASIA’S BEST BAR」のベスト100に選出されるなど、世界にも名を轟かす存在です。

「BAROSSA cocktailier」の中垣繁幸さん

そんな岐阜を代表するバーテンダー・中垣さんが「クラフト・カクテルの製造所を造るらしい!」と巷でウワサになったのはコロナ禍真っ只中のこと。2021年夏、川原町にある明治時代の蔵を大改装し、そこにお酒の蒸留所を立ち上げたのです。

「2019年、50歳を過ぎたタイミングをラストチャンスと定め、何か新しい挑戦をしようと決意しました。海外に出店する、東京に移転する…等様々な選択肢を考えていて、酒造りもその一つだったんです」

そこへ来て2020年は未曾有のコロナ禍。飲食業界にもこれまでにない危機が訪れ、お酒の提供すらできない日々が続きます。そんな何もできない、何も考えられない状況下において、中垣さんの中で必然的に絞られたのが「酒造り」の道でした。決意にあたっては、お客さんの存在も大きかったとか。コロナの自粛期間中は「料飲店等期限付酒類小売業免許(=お酒自体の販売ができる免許)」を取得し、バロッサでもワイン等お酒の販売を行っていたのですが、その際常連さんに言われた「せっかくならマスターのカクテルも売ってほしい」という言葉が、背中を押ししたそうです。

「車で例えるなら、バーテンダーはレースドライバーなのに対して酒造家はメカニック。全くの畑違いですが、憧れはずっとありました」

これまで県内蒸留所でのジンのレシピ開発に携わり、海外で小規模な酒造場を数多く見て回った経験のある中垣さんは「小さな蒸留所でもやれるはず」と、酒造免許を取得。こうして2021年、クラフト・ジントニック(=ジンをトニックウォーターで割った定番カクテル)作りを目指す「長良酒造」がスタートを切りました。

長良酒造/LONG GOOD 誕生
この先、長く付き合えるカクテルを

蒸留所の近くを流れる清流・長良川から命名された「長良酒造」。ブランド名の「LONG GOOD」は「長良」の直訳、さらには今後の「長く良いお付き合いを」という想いもこめられています。

蒸留所の近くを流れる清流・長良川から命名された「長良酒造」
蒸留所は金華山を望む観光地・川原町に。県外から来る方にとっても岐阜のコンテンツとして受け止めてもらえるよう、観光のハブとなる場所を意識したそうです。

蔵の中にお邪魔させていただくと、中には貯蔵タンクに蒸留器、遠心分離機、ラベラー等が所狭しと並んでおり、外観からは想像できないほど“酒造りの現場”!そこで真剣なまなざしでジンと向き合う中垣さんの雰囲気もまた、職人の佇まいです。

蒸留所の近くを流れる清流・長良川から命名された「長良酒造」
蒸留所の近くを流れる清流・長良川から命名された「長良酒造」

こちらはカクテルに使うジンを造るための減圧蒸留器。

蒸留所の近くを流れる清流・長良川から命名された「長良酒造」

ジンとはスピリッツと呼ばれる蒸留酒に、ジュニパーベリーというセイヨウネズの実や香草・薬草等で香りを付けたもの。これはその過程で再蒸留するのに使う機械です。蒸留器内の気圧を下げることで、中は真空状態になります。

ボタニカル感のあるジンを目指して、一切妥協を許さない中垣さん。岐阜県産のクロモジや白川茶を使用する等、地元や季節の素材にもこだわっています。

取材時もライムやヨモギ等、様々な素材を漬け込み中。今後どんなフレーバーが登場するのかにも期待が高まります。

蒸留したてのジンを口に含ませていただくと、むせかえりそうなほどに濃縮された爽やかな香りが鼻腔いっぱいに!これが中垣さんの目指す“素材感のあるジントニック”の要となります。ジンを割るトニックウォーターの製造もブレンディングも全てこの蒸留所で。これらの工程を経て、バーテンダー・中垣さんの手による「クラフト・ジントニック」が完成します。ちなみに現在販売されているのはこちらの3種類。

バーテンダー・中垣さんの手による「クラフト・ジントニック」
(左から)「グリーンティ+ジャスミン」、「カフィアライム+ローズ」、「黒文字+ベルガモット」。ラベルにはそれぞれ素材の写真を組み込んでいるのもこだわり。

缶を開けると、フレッシュな香りにまず驚き。一口飲めば爽快な味と香りが駆け抜けて、シンプルに「おいしい!」の一言が漏れ出ます。どのフレーバーが好きかか、あれこれトークしながら飲むのも楽しそうですね。ちなみに中垣さん曰く、缶に詰めたてよりも2カ月経ったくらいの方が、より美味しくなっているそう。

「それぞれに立ち上がっていたフレーバーが、あるものは表に立ちあるものは裏方に回り…和音のように融合して落ち着きが生まれるんです」

うーむ、クラフト・ジントニック、奥が深いですね。

カクテル一筋だからこそ目指す
今後の展望

バーテンダーとして、そして酒造り職人として。二足のワラジで歩みを始めた中垣さんには、35年間カクテルと真摯に向き合ってきた矜持の上で描く、理想の未来が。

「まず一つ目は、このクラフト・カクテルを通して“バーテンダーの作るカクテル”の裾野を広げたいということ。この缶入りジントニックは、バーに行くのはちょっとハードルが高い…そんな方にも気軽に親しんでもらいたと願って作ったカクテルです。これを飲んで美味しいと思ったら、次はぜひバーでカクテルを楽しんでみてほしいですね」

そしてもう一つは、“カクテル”のイメージを変えること。

「長年カクテルに携わってきて、バーテンダーが考えるカクテルと一般的なカクテルのイメージが乖離していることは、ずっと気になっていました。甘くて飲みやすいカクテルは、あくまでお酒を嗜む入口であって、ビールやウイスキーの味を覚えるにつれて下に見がち…そんな世の中の風潮ですね。でも実際はそうじゃない。ウイスキーもワインもシャンパンも、全てのお酒を知った上で楽しんでほしい飲み物なんです」

こうしたイメージの溝を埋めたいと考えるからこそ、中垣さんはいつでも本物を味わえるクラフト・カクテルの浸透を目指します。

「現在は日本だけでも各地の小さな醸造所で造るクラフトビールが増えて、個性的な缶ビールが飲めるようになりました。僕はカクテルで、まさに同じことをやりたいと思っています」

生活に寄り添うジントニックを。この先ずっと、長く付き合えるカクテルを。

「カクテルは人生をかけて取り組んできたこと。自然派ワインやクラフトビールに並ぶ選択肢として、このナチュラルなジントニックを加えていただければ最高ですね」

さらりゆるりと自然体で、カクテルへの情熱と目標を語る中垣さん。だからこそ、中垣さんが理想として思い描くカクテルが寄り添う暮らしは、お洒落で素敵で何よりとても心地よいものに思えます。

バーテンダー・中垣さんの手による「クラフト・ジントニック」

クラウドファンディングでも大きな支持を集めたこのクラフト・ジントニックは、通販サイトで販売開始。また岐阜市川原町にある「長良川デパート」と岐阜駅隣・アクティブGの「THE GIFTS SHOP」でも店頭購入できるようになりました。

それぞれのライフスタイルに優しく寄り添い、幸せな時間をもたらしてくれるLONG GOODのクラフト・ジントニック。お酒を愛する方や中垣さんのカクテルファンはもちろん、ちょっぴり素敵なおうち時間を過ごしたいという方にもオススメです。

クラフト・カクテルのある暮らし、ラフな気持ちで始めてみてはいかがでしょう。

LONGGOOD 長良酒造

【住所】岐阜市玉井町12
【HP】(通販サイト) https://longgood.jp/pages/web-shop


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