もっと!『怪獣ヤロウ!』×『アユラ』監督インタビュー

2025年は岐阜の特撮映画がアツい!
今年1月に全国公開された映画『怪獣ヤロウ!』の監督・八木順一朗さんと、現在製作中の『アユラ』の監督であり、カメラマンとして『怪獣ヤロウ!』の製作にも携わった柴田晃宏さんに、映画の魅力や裏話を語り合っていただきました。

本記事では、ぷらざ5・6月号で未公開の内容を中心としたインタビューをお届け。ぜひ本誌と合わせてご覧ください♪
※2025年4月時点の情報です

こちらの電子ブックから、どなたでもご覧いただけます!

監督のご紹介

八木 順一朗さん

1988年生まれ、関市出身。株式会社タイタンに入社し、爆笑問題、春とヒコーキ等のマネージャーを務める傍ら映画監督として活躍する。

柴田 晃宏さん

1989年生まれ、羽島市出身。株式会社東海制作の代表取締役社長で「岐阜で撮らせたらこの人!」との呼び声も高い映像クリエイター。

監督インタビュー
―映画に込められた深い怪獣愛―

注目のお笑いコンビ・春とヒコーキのぐんぴぃさん主演、関市が舞台の映画として話題となった『怪獣ヤロウ!』の反響はいかがでしたか?

八木さん:想像以上に好評で「関市に行きたくなった」、「劇中の鰻を食べてみたい!」等の声をいただけて嬉しいです。東京では公開から1ヵ月以上経っても満席になる映画館があり、驚きましたね。
地元飲食店とのコラボメニュー販売や劇中使用美術装飾品展示会の開催、ロケ地マップの配布等、映画をきっかけに関市を楽しんでもらおうという動きもありました。理想的な形の地域映画になったと思います。

柴田さん:地域映画のよくある悩みが、せっかく劇場で公開してもコアな映画好きにしか見てもらえないこと。
でも『怪獣ヤロウ!』は、映画愛好家はもちろん、ぐんぴぃさんファンや特撮ファンにも注目されて…正直、めっちゃ羨ましいです。こうやってファン層が拡大していくと最高ですよね。

怪獣ヤロウ!関市ロケ地マップ
劇中使用美術装飾品展示会の様子

岐阜で特撮映画を作るにあたって工夫されたことは?

八木さん:怪獣特撮映画は、ミニチュアや着ぐるみ、火薬、CGといった技術を要するため、予算・時間・労力がかかりがち。『怪獣ヤロウ!』製作中は様々な制約がある中で、いかに特撮を成立させるかを皆で考えました。
『ゴジラ』(1954年)の特殊技術を務めた特撮のレジェンド・円谷英二さんのエピソードに「火山の噴火を表現する方法を考案した際、味噌汁のお椀の底に沈んだ味噌をかき混ぜたときの様子からアイディアを得た」というのがあります。
映画内でも描写しましたが、円谷英二さんの考え方を見習いながら「岐阜の素材を活用して、今までにない特撮映画を作る」ことを意識していました。

柴田さん:『怪獣ヤロウ!』のロケハン(撮影場所の下見)時には、どうしたら面白い映像が撮れるか、アイディアを次々と出し合いましたよね。

八木さん:実のところ、作中で関のまちはそれほど破壊されていないんです。しかし、地元の工務店・株式会社フクタハウスさんが1/25ミニチュアを作ってくださったこともあって、ひとつの建物を壊すだけでも映像としてはかなりのインパクトを出せたと思います。

柴田さん:まさにあのシーンはリアルの演技をメインにしたからこそ面白く、迫力のある映像に仕上がりました。一方の『アユラ』はフルCGにしているんです。魚らしい動きを追求したかったので、この手法が最適だと考えました。
『アユラ』は岐阜市を中心に羽島市や各務原市でも撮影を行いましたが、岐阜は面白い映像が撮れる可能性に満ちた場所だと改めて感じましたね。

『怪獣ヤロウ!』のミニチュア撮影の様子

ずばり、怪獣特撮の魅力は?

八木さん:やっぱり破壊シーンを通してすっきりした気持ちになれるところ。現実では嫌なことや辛いこともあるけれど、映画の中は夢が叶えられる理想郷であって欲しいですから。
ゼロになるまで壊して、まっさらな気持ちで新しい日々を始めさせてくれる存在が、僕にとっては怪獣でした。

柴田さん:あえて八木さんのお話と違う方向性の魅力を挙げるなら、「誰かが考えた、見たことのない生き物」の生態を垣間見られるところです。
昔から動物園や水族館で生き物を観察するのが好きで、各務原市の世界淡水魚園水族館「アクアトト・ぎふ」にもよく行っていました。
アユラの生態を深掘りするために同施設から鮎に関する資料を取り寄せたことも。そんなご縁もあるので、何かしらの形でコラボできると嬉しいですね!

映画『アユラ』に登場するオリジナル怪獣・アユラのデザイン画。5つの尻尾と4つの目が特徴。デザインを手がけたのは、CG制作を担う株式会社白組に所属し、本編の特技監督を務める上西琢也さん。

映画監督としての今後の展望をお聞かせください。

八木さん:「怪獣ヤロウ!2」はぜひ作りたいと思います。また、怪獣を主役に据えた更に本格的な怪獣映画にも挑戦して、もっと色々なものを壊してみたいです(笑)。

柴田さん:実はすでに次回作の構想もあり、脚本執筆を進めているところ。様々なジャンルの映画にチャレンジしていくので、楽しみにしていてください!

最後に、それぞれの映画の見どころを改めて教えてください。

八木さん:『怪獣ヤロウ!』は、関市の人にとってはおなじみの風景が登場する、まさに関でしか撮れない映画となっています。キャストの岐阜弁にもぜひ注目してほしいですね。
また、今作は「怪獣映画を作る映画」という切り口にしたことで、人々が怪獣に襲われる映画では描けない、「怪獣は何を象徴しているのか」について自分なりの考えを込めることができました。

柴田さん:近年の怪獣映画は大人向けのシリアスな作品が多かったので、『アユラ』は子ども達も夢中になれる映画を目指しました。
とにかく岐阜ネタ盛りだくさんで、くすっと笑える作品に仕上がっていると思うのでご期待ください。

ありがとうございました。

怪獣ヤロウ!

関市役所観光課に務める山田一郎はある日、市長からご当地映画の製作を命じられる。しかしよくある“凡庸な”ご当地映画に疑念を持った山田は、ダメでぱっとしない自分を、そして故郷を変えるためにかねてからの夢「怪獣映画」の製作を思いつく。ところが、その想いは市政を巻き込んだ大事件へと発展していき…。

出演:ぐんぴぃ、菅井友香、手塚とおる、三戸なつめ、平山浩行、田中要次、麿赤兒、清水ミチコ
監督・脚本:八木順一朗
アユラ

何気ない日々を送る岐阜に突如として巨大な鮎「アユラ」が現れた。逃げ惑う岐阜県民を横目に街を蹂躙するアユラ。役所の職員として働く薫があまりの非現実的な光景にたじろぐ中、先輩の奈々美が「薫、あなたには、本当の仕事がある」と告げる。明らかになる衝撃の事実とは?岐阜県民は街を守ることができるのか?

監督:柴田晃宏
共同監督・脚本:サノワタル
特技監督:上西琢也
キャスト:山口ことね、高橋ゆな、長谷川愛美、新井敬太、桂七福 ほか
企画・製作:東海制作

『怪獣ヤロウ!』は4月末からAmazon Prime Videoにて配信。『アユラ』は2025年夏に試写予定。ぜひ映画を楽しんで、さらに岐阜を盛り上げていきましょう!

この記事を書いた人