柳ケ瀬で再び、大衆演劇の華が咲き誇る――岐阜夢ざくら劇場 恋川純弥代表インタビュー

2025年9月始動!新・大衆演劇場

2007年の豊富座オープン、2011年のぎふ葵劇場への転身、2021年シネックスビルへの移転リニューアル…と、様々な歴史とともに長きにわたり柳ケ瀬で愛されてきた大衆演劇。今や岐阜になくてはならない文化の一つになっています。それだけに2025年7月のぎふ葵劇場の閉館には寂しさを感じていた方も多いかもしれません。でもそんなさなかに嬉しいニュースが!9月1日より同じ場所で「岐阜夢ざくら劇場」が誕生。再び大衆演劇をこの地で楽しめるようになったのです。

新たに劇場の代表に就任したのはこの方、大衆演劇ファンにはお馴染みの恋川純弥さん。日本全国を舞台に活躍する恋川さんですが、実は岐阜市在住の俳優さん。そこで今回、観劇レポートと合わせて恋川さんの新劇場にかける情熱や展望、岐阜や柳ケ瀬に対する想いまで、お話を伺いました。

まずは観劇。中毒性抜群の艶やかな世界

「岐阜夢ざくら劇場」というのは、「大衆演劇の文化を次世代に繋いでいきたい」、「地域に根差し、愛され、育てていただける“まちの劇場”を岐阜の地につくりたい」――そんな恋川さんの願いから“夢の桜が咲く場所”という想いを込めて命名されたもの。そんなネーミングをイメージして、エントランスは和傘や桜のモチーフで華やかに彩られています。

始まりはは舞踊ショーから。入れ替わり立ち替わり役者さんたちが登場して、煌びやかな舞台に、あっという間に引き込まれます。

続いてはお芝居。毎日異なる演目が楽しめるのも大衆演劇の魅力。人情劇に喜劇、任侠ものなどジャンルも様々です。勧善懲悪の物語やアドリブ満載の楽しい舞台に、泣いたり笑ったり思わず息をのんだりと、感情移入必至。毎日これだけ長いお芝居を、よどみなく情感豊かに演じられる役者さんってすごいなあと、何度観ても感心します。

ちなみに訪れた日のお芝居は「三浦屋孫次郎」。つらい展開がとっても身につまされるお話で、最初から最後まで目が離せませんでした。

続く舞踊ショーは盛り上がりも最高潮!ド派手な演出、耽美な舞踊…と、役者さんが出てくる度に変わるめくるめく世界観にミーハー心がたぎります。

この日は「ぎふ葵劇場」の代表、葵好太郎さんもゲスト出演されていました。

ラストショーもすごい盛り上がり! 夢のような時間に、観終わった後も興奮の余韻が冷めませんでした。

恋川純弥さんにお話をお聞きしました

さて、ここからは、代表の恋川純弥さんのインタビュー。劇場にかける現在の想いを語っていただきました。

恋川純弥さん
「桐龍座 恋川劇団」で座長を務めた後、フリーの俳優に転身。歌、お芝居、舞踊はもちろん、三味線、和太鼓、殺陣にダーツ…と、日本伝統の枠に収まらぬ多彩なジャンルで活躍する。大阪府出身、岐阜市在住。

――まずはここ岐阜で劇場をオープンされたきっかけを教えてください。

恋川さん:岐阜にはぎふ葵劇場がドン・キホーテにある頃から、公演でちょこちょこお邪魔していたのですが、縁あって今は10年以上岐阜市で暮らしており、ありがたいことに岐阜の舞台にももっと出てほしいというお声も頂戴しています。そんな折に、これもご縁をいただいて、岐阜に根差す形で劇場主を務めることになりました。

――フリーの俳優さんとしてマルチに活躍する恋川さんだけに、特定の地に根を張る劇場主という立場は、ある種対局にあるようにも思えます。

恋川さん:劇場主になろうと決意したのは、俳優活動とは別の違うことに挑戦してみたいと思ったから。40代も半ばになり、いずれ現役を退いたときの在り方や居場所を考えるようになったのも大きいですね。今は劇場主となったことで、俳優としての活動は好きなこと、やりたいことを追求して自由に楽しめたらと思っています。

――恋川さんにとって、柳ケ瀬商店街はどんな印象ですか?

恋川さん:髙島屋が閉店して寂しくなったという声も聞かれますが、実際に商店街を歩いてみれば、若い方もどんどんお店を出していて活気が感じられます。それにどこのお店に入っても、ごはんがすごくおいしいんです。僕は仕事柄、色々な地方に行っていますが、岐阜の食べ物は群を抜いておいしいと思いますよ。そんな魅力や可能性がある場所だからこそ、このまちをダメにしてはいけないと強く思いますし、岐阜さくら劇場が柳ケ瀬に足を運ぶきっかけにもなると嬉しいですね。とはいえまだここに劇場があることをご存じない方も多いと思うので、まずはそれを知ってもらうことから。劇場のオーナーとして新劇場や柳ケ瀬の良さを伝えたり、様々なイベントに俳優としてお邪魔したりと活動の幅も広げていけたらと考えています。

――大衆演劇の魅力は、どんなところにあるとお考えですか?

恋川さん:なんといっても低料金でたっぷり3時間、生の舞台が楽しめること。客席と舞台の距離が近く一体感が生まれやすいのも持ち味ですね。新しい劇場はこれまでよりもステージが広くなり、舞台装置も色々と進化させているところなので、よりその魅力を実感していただけると思います。また、大衆演劇は1カ月毎に劇団が入れ替わるのも特徴。毎月、何度も足を運んで、ぜひ各劇団さんのファンになっていってください。

舞台一面に舞う花吹雪も、新たに加わった舞台装置。

――最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

恋川さん:岐阜は帰ってくるとホッとする、大好きな地元のまち。だからこそ多くの皆さんに劇場に足を運んでほしい、観劇をきっかけに岐阜の良さをもっと他県の方たちに知ってほしい…等々様々な想いで取り組んでいます。「岐阜夢ざくら劇場」のある通りは「劇場通」といって、かつてはたくさんの芝居小屋が軒を連ねた場所でもあるんです。その名を継承するつもりで、劇場自体もさらに魅力ある場所にしていきたいですね。僕もできるだけたくさん舞台に出るつもりですし、時には受付に立って、皆さんと交流できたらと思っています。7階まで行くのがちょっと…という方も、足を踏み入れてみれば大衆演劇の面白さを肌で感じていただけるはず!ぜひお気軽にお越しください。

岐阜夢ざくら劇場
【住所】
岐阜市日ノ出町2-20 シネックスビル7F
【営業時間】
昼の部12:00開演(開場11:15)
夜の部17:30開演(開場16:45)
【料金】
当日券2,500円(月会員の方は2,000円 ※加入には会費3,000円)
【SNS】
X @J_Yume_Zakura

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