薬草・ハーブ・水
薬草文化の聖地ならではの恵みの湯
今年で27年目、1996(平成8)年に各務原市に誕生した「恵みの湯」。スーパー銭湯の先駆け的な存在として愛されてきたこの温浴施設には、ここにしかない魅力が満載。そこで今回は独自のシン・スタイルを確立する恵みの湯もとい「日本温浴研究所」さんへの取材を敢行!いったいどんな取り組みを行っているのでしょうか?
そもそもこの地に温浴施設を作ったのは、以下のような風土的な魅力に恵まれているからなのだそう。
体が温まる名水「御前水」…ミネラル豊富な黒墨土壌に染み込んだ天水と御嶽山の伏流水から成るという各務原の天然水。皇女 和宮も美味と讃えたというこの「御前水」は、炭酸を含み体がよく温まるといわれています。
太古から続く「薬草文化」…古来、薬草やハーブが生育し、奈良時代から天皇に献上されていたという岐阜の土壌。特に戦国時代には織田信長公によって伊吹山に薬草園が作られ、多種多様な薬草が移植されました。
恵みの湯は、こうした岐阜ならではのカラーをテーマに打ち出しているのが持ち味。スタッフの並河征之さんによれば、
「冬至には柚子湯に、端午の節句には菖蒲湯に入るというようなお風呂文化は古来日本に根付いてきたもの。薬草文化が色濃い岐阜は、こうした日本の風習とも相性が良いといえます」
薬草湯に加え、絶大な人気を誇るのが「ととのい生ハーブロウリュウ」。ロウリュウとはフィンランド式の蒸気サウナのこと。毎週水土日は自社栽培のハーブを投入。室内にフレッシュな生ハーブの香りがいっぱいにたちこめます。
サウナでととのった後には、サ飯や話題のサウナドリンク「オロポ(オロナミンC+ポカリスエット)」もぜひ。お座敷もあってくつろぎ感満点の「めぐみの食堂」は、モーニングやランチ等食事だけの利用も多いとか。こうやってシーンを選ばずふらっと立ち寄りやすい雰囲気なのもいいですね。
コロナ禍の逆境も進化のきっかけ
新たな動きが次々と始まっています
とはいえ多くの入浴施設と同様、コロナ禍では大きな打撃を受けた恵みの湯。特に2020年のGWは繁忙期にもかかわらず緊急事態宣言下で休館を余儀なくされ、途方に暮れる状態だったそうです。しかしそんな中で訪れたのが想定外のチャンス。ネットでも販売している入浴剤ギフトがコロナ禍の母の日商戦にはまって、売り上げが大きく伸びたのです!これを機に「自分たちでも入浴剤を作れるようになろう!」と、化粧品の製造認可を取得。そして2022年、大きな話題となったのが7月にオープンした「湯癒草々 GARDEN&FACTORY」です。
ここはハーブの栽培から製品作りまでを一貫して行う施設。今回、真新しい施設の中を案内していただきました。まずはハーブガーデンを通って、「FACTORY」へ。収穫したハーブを加工する施設です。
工程ごとに区切られた部屋はガラス張りになっており、作業の様子がよく分かります。ハーブを粉砕する機械、蒸留してオイルを摂る装置…等々興味深いものがいっぱい。
バスルームでは主に製品となる入溶剤のテストを行います。ゆくゆくは薬効のエビデンスをしっかりとPRできるよう、お医者さんとの連携も視野に入れているそう。こうした先を見据えた視点にも驚きますね!
一方、こちらは商品のレシピを開発する「LABORATORY」。
成分、細菌、香り等の検査も自社内で細かく行っています。
地域の一翼を担う新しいカタチ
新しいハーブ園の驚きの役割とは?
施設の近隣に自社ハーブ農園を持つ恵みの湯ですが、この10月、新たに施設内にも農園をオープン。それがこの広々と開放的なビニールハウスです。
主な目的は、露地栽培だけではなかなか困難な年間を通したハーブの供給。しかし実はそれ以外にも様々な理由が。それはハウス内を見るとよく分かります。まず大きな特徴が、高床式砂栽培を取り入れた「スマート農業」。入ってすぐに気づくのが、畑が腰より高い位置にあること。「高床」のメリットは、腰をかがめる必要がなく作業時に体への負担がかかりづらいこと。さらにハーブの植わった土壌を良く見ると、全面砂地になっているのが分かります。
そもそも砂で植物が育つの?そんな疑問がまず浮かびますが、実は砂栽培には「土づくりの必要がない」「砂を丸洗いできるので、連作障害が少なく葉物ならば10毛作でも可能」等、様々な利点があるそう。水や肥料は張り巡らされたチューブを使って自動で行っています。また通路は車椅子でも通れるように広く設けているのもポイント。
こうした方法を取り入れているのは、このハウスのハーブを地域の方と一緒に管理していきたいという想いが根底にあるから。
「園芸療法という療法もあるくらい、植物を育てることによる癒しやリラックス効果は、心身に良い影響をもたらします。例えばハーブ作りを通して、家に一日中いるお年寄りが外に出るきっかけになってもらいたいというのも願いの一つなんです」
と、並河さん。ふれあいバス「チョイソコ」等も活用しつつ、社会と繋がれるだけでなく、ハーブ作りの対価としてお年寄りがお風呂に無料に入ってもらえる仕組みも考えているとか。単に地域に住む人々に寄り添うだけでなく、一緒になって施設を運営・循環させていこうという考え方があるんですね。
幸せなお風呂時間を過ごしてほしい。そんな想いをきっかけに、生み出されるコンテンツは無限大。
・忙しい毎日の活力になるお風呂時間
・ゆったり楽しむおいしいごはん
・社会と繋がれるコミュニティー
・地元を盛り上げる人々が活躍できる場所
・薬草の活用のパイオニア
どれもこれもが恵みの湯の顔で、様々な垣根を超えた連鎖の賜物。ゆくゆくは地域防災の観点から災害時の一時避難所にするという構想もあるとか。ますます地域に欠かせない場所になりそうです。スピーディーにしなやかに、私たちの予想を軽く超える進化を続ける恵みの湯。今後の動向にも注目です!
恵みの湯
【住所】各務原市鵜沼各務原町2-68
【時間】 8:00~23:00(現在はコロナ禍のため~22:00)
【TEL】058-385-2611
【HP】 https://www.meguminoyu.jp/