【11・12月号】芸術の秋、音楽に触れる ~サラマンカホールの舞台裏を探検!~

ぷらざ11・12月号の14・15ページ『芸術と過ごす秋のひととき』で、その舞台裏をご紹介した「サラマンカホール」。平成6年4月に開館し、今年29年目を迎えました。

「コンサートを聴きに行ったわ」「演奏したことある!」という方もいらっしゃるかと思いますが、私たちが目に触れているのはほんの一部。実はバックステージには知られざる設備や出演者・ゲストのみが利用できる部屋など、普段は入れないスポットが色々あるんです!
そこで今回、サラマンカホールの職員さんにお願いをし、バックヤードや天井裏など隅々まで見せていただきました。本誌では一部しかご紹介できなかったため、このWeb記事ではたっぷりと披露します。

岐阜のオルガンビルダーSTORY

サラマンカホールを紹介する上で欠かすことはできない、巨大なパイプオルガン。それは、「サラマンカホール」の名前の由来にも大きく関わっています。
高さ10.5m、幅8.4m、2,997本のパイプを持つ本格的なパイプオルガンを手掛けたのは、岐阜県白川町のオルガン建造家・辻宏氏。サラマンカホール建築にあたってオルガンを建造する際、スペイン・サラマンカ市にある『サラマンカ大聖堂のパイプオルガン』を複製しました。
きっかけは、サラマンカホール開館から遡ること5年前、辻氏が「鳴らずのオルガン」と呼ばれていたサラマンカ大聖堂のパイプオルガンを、8ヵ月かけて修復し蘇らせたこと。その後サラマンカ市との交流が深まったこともあり、名称がサラマンカホールに決まったのです。
サラマンカホールのパイプオルガンは、後部は北ドイツ・バロック様式、前部は国内初のスペイン・ルネッサンス様式を独創的に組み合わせた “唯一無二”のもの。そんなパイプオルガンが、岐阜に工房を構えていた世界的なオルガンビルダーによるものだと知ると、とっても誇らしい気持ちになります。

パイプオルガンはどうやって鳴るの?

パイプに風を送り空気を振動させることで音色を奏でるパイプオルガン。
風箱(各音によって無数に分かれた小部屋)の上にパイプがずらりと立てられており、下から風を通して圧力をかけた空気がパイプを通って音が鳴るもので、リコーダーを吹くのと同じ原理です。その風を送る役割を果たしているのが、“ふいご”という送風装置。※ふいご…空気圧を変えることによって空気の流れを生み出す器具。
ふいごは昔は職人が操作し人力で風を送っていましたが、現代は電気モーターを使って風を起こすのが主流。というわけで、送風装置が置かれている部屋(パイプオルガンの下部)を実際に見せていただきました。

小ぶりなモーターと、その先にあるのは蛇腹のような形をした大きな木製ふいご。送風機をONにするとふいごが膨らみます。普段は送風機からの風で演奏できますが、大音量で風量が足りなくなった時に、ふいごから必要な量の風を送り出す、という仕組み。

この送風機の消費電力はわずか750Wだそうで、どれほどのパワーかというと…カールドライヤーと同じくらい。思った以上に少ない電力でも風を起こすことができることに驚きました。

ちなみに、空気漏れを防ぐための接続部にはラム皮(羊の皮)をにかわで接着するなど昔ながらの素材を使用。合成接着剤といった化学的な素材などない時代からの伝統製法が守られています。

鍵盤と音栓

パイプオルガンの演奏席にも特別に座らせていただきました。
手鍵盤と足鍵盤があり、手鍵盤の両サイドにはノブが合計60個も!これは「ストップ」と呼ばれる音栓で、ストップを引っ張ることでそれに対応したスライダー(穴の開いた板)が動き、この穴と下にある板の穴とが一致して風が通って音が鳴ります。
ストップは、音色と音の高さを変えることができまる“音色を選ぶスイッチ”のようなもの。同じ鍵盤を押していても、ストップを切り変えることで全く別の音色に変えられるとあって、同じ曲でも異なる表現が可能になります。
ということで、実際にストップを引っ張って音を鳴らしてみることに。

手鍵盤は3段あるし、ストップが右にも左にもあって、複雑すぎてどう操ればいいのかワケが分かりませんでした…(;´∀`)
でも、これらの組み合わせによって柔らかい音色から力強い響きまで様々な音を出せることが分かり、オルガニストがどんな演奏を届けてくれるのか――これまでと違った見方で鑑賞できそうです。

ハイクオリティなホール

ホールにはフロア席とバルコニー席があり、708名収容できる「シューボックス型」。“靴の箱”のような直方体だからそう呼ぶそうです…なるほど!
ちなみに他には、客席が幾つかのブロックに分かれ段々畑のような形状をした「ヴィンヤード型」もあります。
それぞれに音響の特性がありますが、シューボックス型を採用しているサラマンカホールでは、フロア席でもバルコニー席でも音の差がなく均一に得られるのが特徴…つまり、観客の誰もが聴き心地がいい!と思える音響なのです。
また、最大の持ち味とも言えるのが残響時間。満席時1.7~1.9秒(空席時は2.1秒)で、ピアニッシモ(演奏強弱の中で「ごく弱く」の意)でも音が力を失わずに客席の隅々まで伝わるとあって、最高の余韻を作り出します。クラシック音楽専用のコンサートホールでは豊かな響きが要求されることもあり、この残響時間は演奏の表現において大切な要素であることが分かります。

「天井や側壁には凹凸があるのが分かりますか?」と問われ注視してみると、確かにデコボコしています。これは、反射音がホール全体に行きわたるようにと計算されたデザインによるものだそう。

さらに、ホールの静けさを保つために壁・床はコンクリートの2重構造。
屋根もコンクリートと金属屋根の2重構造とあって防音・遮音は万全とのことで、そちらも特別に見せていただきました。

ここまで計算し尽くされているとは、音の世界はなんてデリケートなのでしょう!

秘密の部屋⁈

「劇場などの後方にあるようなピンスポットライトを操作する部屋がここにもあります。どこだと思いますか?」の問いに必死に見渡すも見当たりません。すると、突然動き出したある箇所に「えっ⁈」

天井が閉じている状態
あ!天井の一部が開いた⁈

なんと、天井後方の一部が開くではありませんか!下から覗くと真っ暗ですが、なんだか隠し部屋みたい…?

その正体は、バルコニー席より階上にある「センタールーム」。コンサートやオペラの際に使われるピンスポットライトがステージを向いて置かれており、ここから照明スタッフが操作するとのこと。網仕様の仕切りからは生音が届き、観客と同じ臨場感を味わいながらスポットを当てることができるのです。
ホールを見下ろしてみると、ヨーロッパのオペラ劇場を彷彿とさせる壮大な眺めに「おぉー!」と思わず感嘆。アーティストの動きに合わせ正確なタイミングで照明を当てる…裏方のすごさを感じ取ることができました。

出演者の楽屋

サラマンカホールには6部屋の楽屋が用意されています。アーティストが最良のコンディションで本番に臨めるよう、待機する楽屋というのがコチラ。

指揮者やソリスト、コンサートマスターが利用される個室(3部屋)にはソファやシャワー室、AVモニターが備わっており、アップライトピアノで本番直前までウォーミングアップも可。ゆとりを持って快適に過ごしてもらえるように…という配慮が見て取れます。
他に団体用の楽屋もあり、出演者たちが休憩したり着替えることができます。

応接室

また、サラマンカホールではVIPなお客様をお迎えすることもあります。その際にご使用いただくのがこちらの応接室。

最高に贅沢な空間ですよね♪

このように、サラマンカホールには隠れた魅力やこだわりが満載。“国内屈指のコンサートホール”と称されるのも納得です。

「ここは、県民のみなさんが聴いたり発表するだけではありません。若き演奏家たちの育成の場として、演奏実績を積み重ねる場所でもあります」
そんな職員さんの言葉に思わず深くこっくり。良質なホールで良質な音楽文化に触れることで、演奏家としてのすばらしい表現力を身につけて音を奏でるに違いありません。

サラマンカホールの舞台には、世界の第一線で活躍するようなアーティストたちが大勢立ち、観客の心を掴んでいます。その裏で支えている想いや工夫、音楽と向き合う姿勢を知ると、ここで鑑賞できることの悦びもひとしおです。


さて。ここまでサラマンカホールの舞台裏を余すことなく披露してまいりました。
さっそく「足を運びたい!」という気持ちが高まってきましたよね⁉

ご安心ください!年末には素敵なコンサートが控えていますよ☆

サラマンカホール・プロデュース・オペラ
マスネ作曲「サンドリヨン」

【日時】
 ◎12月16日(金)18:30開演(17:30開場)
 ◎12月17日(土)14:00開演(13:00開場)
【料金】
全自由席2,000円[メイト1,800円]、高校生以下500円
※未就学児の入場はご遠慮ください
【問合せ】
058-277-1110(サラマンカホールチケットセンター)

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上質な音楽に触れ、心が洗われる気持ちで年の瀬を迎えてみませんか。

サラマンカホール
【住所】
岐阜市薮田南5-14-53
【交通】
JR岐阜駅(北口)から岐阜バス(5番のりば)にて約20分
【駐車場】
あり
【TEL】
058-277-1113
【HP】
https://salamanca.gifu-fureai.jp/

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