かつ丼パラダイスGIFU~岐阜のかつ丼8選~

かつ丼は和洋折衷、懐かしくて新しい丼の御馳走。全国共通、現代日本のソウルフードともいえる存在ですが、ここ岐阜では、事情がかな~りぶっ飛んでいると聞きつけ東奔西走かつ丼行脚を敢行!その取材レポートと考察は、下記記事にて詳しく特集しています。

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本記事では本誌でご紹介の岐阜のかつ丼8選を、ダイジェストでお届け。かつ丼巡りの旅の参考にしてみてください。

「大福屋」の卵とじかつ丼(岐阜市)

王道かつ丼の完成形

かつ丼…800円
✔美濃けんとんのロースかつ ✔細切り玉ねぎの卵とじ ✔山椒がアクセント

創業/昭和35年(現・3代目)
●かつ丼誕生/昭和52年頃

卵のふわふわ感、玉ねぎのシャキシャキ感、丁寧に筋切りしたお肉…全てが混然一体となったバランス重視の正統派かつ丼。濃口のたまり醤油を使い、仕上げに海苔と山椒を散らすのが大福屋流です。

取材MEMO
大福屋でかつ丼を出すようになったのは、柳ケ瀬に髙島屋が来るタイミング。建設工事で関西からの肉体労働者が増えると予測して、当初は昆布出汁の関西風の提供を開始。やがて地元のお客さんに合わせて、たまり醤油のかつ丼に落ち着いたそうです。一番のこだわりは、食べたときの三位一体感。ごはん、とんかつ、半熟の卵、タレがしみ込んだ衣…これらが合わさったときに互いを活かし、一つの料理になる――まさにスタンダードかつ丼の究極系ともいえる一杯です。

店主の福井さん(3代目)。

大福屋

【住所】岐阜市神室町1-12-1
【営業時間】11:30〜19:00
【定休日】木曜
【TEL】058-265-6818

「一楽」の卵とじ味噌かつ丼(岐阜市)

卵とじ×味噌のハイブリッド

かつ丼…900円
✔もも肉のとんかつ ✔スタンダードな卵とじ ✔特製のかけ味噌

創業/昭和32年(現・3代目)
●かつ丼誕生/創業時間もなく

オーソドックスな卵とじのかつ丼にかかるのは、八丁味噌とザラメを煮詰めた真っ黒な特製味噌。卵とじも味噌かつも両方味わってほしいと先代が考案したオリジナル丼は、独創的なビジュアルも目を引きます。

取材MEMO
「元祖みそかつ」の店として有名な一楽さんですが、がっつり味噌かつ丼というわけではなく、卵とじの上から味噌をアートペイントのようにかけているのがミソ(味噌だけに)。3代目曰く、おじいさんがお客さんの要望に応えてかつ丼に味噌をかけたのが、その始まりだそうです。真っ黒な味噌は見た目よりもサラリとしており、”みそかつ”として主張し過ぎないのもポイント。卵とじと味噌のカルチャーが融合した、かつ丼の多様な在り方を1杯で体現している丼です。

山椒で味変するのも一興。
店主の山口さん(3代目)。
一楽

【住所】岐阜市弥生町13番地オレンジ通り弥生ビル1階
【営業時間】11:30〜14:30、17:00~19:30
【定休日】月曜
【TEL】090-4216-1518

「鶴岡屋本店」の和風ソースかつ丼(大垣市)

妙味合わさるパンチと一体感

かつ丼…950円 ※卵をのせた(上)は+100円
✔一口サイズに揚げたかつ ✔ソースを纏うポーチドエッグ ✔うどん出汁入りソース

創業/明治35年(現・4代目)
●かつ丼誕生/戦後(2代目が考案)

うどん出汁をベースにケチャップ、ソース、醤油等を合わせた秘伝のタレはデミグラスソースをヒントに誕生。このタレをたっぷりくぐらせたかつには様々な味わいが複雑に生じ、得も言われぬ中毒性があります。

取材MEMO
創業120年を超える鶴岡屋さんのかつ丼は、「揚げた後に切らずにソースにくぐらせる」、「ごはんの上はシンプルにかつのみ」等の共通点から、福井とのソースかつ丼との関連性があるのかもと予測していたのですが、そのルーツはなんと海外に。こちらのソースは2代目が戦時中に、海軍の方から聞いたデミグラスソースを元に考案されたそうです。昆布や鰹でとった関西風の出汁がベースになっているので、味わいは通常のデミとは一味違った和風味。かつをくぐらせることによってソースにも一層の深みとコクが生まれています。

ソース鍋に卵を落として作るポーチドエッグは、お客さんの声をもとに3代目が考案。
うどんとのセットもデフォルト。

鶴岡屋本店

【住所】大垣市久瀬川町2-42
【営業時間】11:00〜14:00LO、17:00~19:30LO
【定休日】木曜
【TEL】0584-78-3219

「朝日屋」の卵ふわふわかつ丼(大垣市)

卵の羽衣を軽やかに纏う

カツ丼…720円
✔味付きカリカリとんかつ ✔エスプーマ状の卵 ✔熱の通った卵の層

創業/昭和11年
●かつ丼誕生/不明

エスプーマにも例えられる出汁の利いたふわふわ卵がのったかつ丼は門外不出、ここでしか食べられない味。カリっと揚げたかつと口の中で消えるメレンゲ状の卵、食感の取り合わせも面白い一杯です。

取材MEMO
羽根布団のようにかつにふんわりかかったメレンゲ状の卵は唯一無二。頬張ると卵の泡は口の中で刹那にとけ、優しいお出汁の風味が広がります。この独特の卵は静岡県袋井市の郷土料理「たまごふわふわ」のようでもあり、上品な味わいははんなり京風のようでもあり…。これをまちの食堂で地元の皆さんが頬張る様子はなんとも小粋。岐阜の食文化の自由闊達さを象徴するような、今なおミステリアスで個性的な一杯です。

鶴岡屋本店

【住所】大垣市東長町40
【営業時間】10:30〜こだわりの出汁がなくなり次第終了
【定休日】月曜
【TEL】0584-78-4054

「五万石」のしょうゆかつ丼(中津川市)

琥珀色のそばつゆだれ

しょうゆかつ丼…900円
✔そばつゆベースのたれ ✔衣に絡むとろみがポイント ✔紅ショウガのアクセント

創業/昭和47年(前身のお店は昭和39年/現2代目)
●かつ丼誕生/
2000年

サクッと揚げたロースかつに、そばつゆベース&とろみをつけたたれをたっぷりかけた中津川名物の元祖。あっさりした出汁感と野菜の甘みが食欲をそそります。現在は市内約10店舗で提供中。

取材MEMO
長野のソースかつ丼、愛知の味噌かつ丼という、近隣県のかつ丼を提供する中で、「中津川オリジナルのかつ丼を」という情熱が芽生え、店主の成田さんが考案したかつ丼。そば文化が根付く中津川らしく、そばつゆをベースに葛粉でとろみをつけているのがポイントです。美しい飴色のたれはあっさり上品テイストで、紅ショウガのみが添えられたいぶし銀な一杯。ぺろりといける味わいなので、そばもセットでぜひ堪能して。

多くの方が注文するかつ丼とそばのセット。
店主の成田さん(2代目)。
食事処五万石

【住所】中津川市落合706-8
【営業時間】11:00〜13:30LO
【定休日】水曜、第1火曜
【TEL】0573-69-3501

「野内」の目玉煮かつ丼(恵那市)

老若男女の心をとらえる愛され丼

野内のカツ丼…1,000円 ※2025年2月現在
✔バラ肉のとんかつ ✔甘辛味の半熟煮卵 ✔ヤミツキつゆだくご飯

創業/約60年前(現・2代目)
●かつ丼誕生/
約60年前

かつには豚のバラ肉を使用、醤油とみりんベースの甘辛テイストは3世代に親しまれる地元の味。仕上げにのせる半熟煮卵はこの丼のシンボルで、かつとごはんに絡むとそのおいしさも加速度的に増します。

取材MEMO
とんかつの上でぷるんと目玉が輝く煮卵がのった野内さんのかつ丼。そのルーツは隣町の陶器の窯処・陶町(瑞浪市)の食堂で先代が出会った味にあるそう。その後も食べ歩きを重ねて試行錯誤の末に完成したかつ丼は、今や県内外から熱視線を浴びる一杯となっています。お年寄りやお子さんも食べやすいようにと豚バラ肉は敢えて小さめにカット。甘辛く煮た半熟卵を潰すと、サックリ柔らかな食感のお肉とつゆを含んだごはんが相まって、おいしさも最高潮に。さめても美味なのでテイクアウトとしても人気の一杯です。

仕上げに鍋から煮卵を注ぐかつ丼。卵がしみたつゆだくごはんも主役級に美味。
店主の西尾さんご夫婦。
食事処野内

【住所】恵那市山岡町下手向439-1
【営業時間】11:30〜14:00、17:00~21:00
【定休日】木曜
【TEL】0573-56-2700

「加登屋食堂」のあんかけかつ丼(瑞浪市)

愛情から生まれた黄金のかつ丼

あんかけかつ丼…1,000円
✔分厚いロースかつ ✔卵入りたっぷりあんかけ ✔黄金色が映える青い器

創業/約100年前(現・4代目)
●かつ丼誕生/
不明(初代が考案)

厚切りのロースかつ丼の上にとろりとした溶き卵入りあんをなみなみかけた、瑞浪のソウルフード。削り節等5種類の出汁をとったあんは滋味豊かな懐かしい味わいで、お腹も十二分に満たされます。

取材MEMO
とろとろキラキラのあんかけに目を奪われる加登屋食堂のかつ丼ですが、これは映え狙い…ではなく愛情から生まれたもの。卵がまだ貴重だった時代、少ない卵でもお腹いっぱいになってほしいと、溶き卵をあんでのばしたのが始まりです。ジューシーな厚切りかつにかかる卵あんはお出汁がじんわり優しくお腹を満たし、食べ終わる頃には心身共にポカポカに。冷めにくいあんかけかつ丼は、昔は夜通し火の番をする陶器職人さんたちの夜食の出前としても人気だったそうで、地場産業を縁の下から支える存在であったこともうかがえます。

店主の横田さん(4代目)。

加登屋食堂

【住所】瑞浪市寺河戸町1144-6
【営業時間】11:00〜14:30、16:30~18:30(完売次第終了)
【定休日】木曜、第2水曜の夜
【TEL】0572-68-6121

「ちちや」のてりかつ丼(土岐市)

洋食×丼の小粋なコラボレーション

てりカツ丼…920円
✔衣の食感を楽しめるかつ ✔ケチャップベースのソース ✔千切りキャベツ

創業/70年以上前(現・3代目)
●かつ丼誕生/
不明(初代が考案)

トマトケチャップをベースにウスターソースや和風出汁を調合したソースをかけたかつ丼は、見た目も華やかな洋食丼。ソースの酸味とキャベツがアクセントになって、どんどん食べ進めたくなります。

取材MEMO
土岐市の名物グルメ「てりかつ丼」の発祥とされるのが、昭和レトロな風情が漂うこちらのファミリーレストラン。てりかつ丼は、初代が岩村町で食べたかつ丼をヒントに独自で開発したものだそうです。トマトケチャップやウスターソースをベースにした洋風かつ丼は、トマトの爽やかな酸味に食欲を刺激され、どんどん箸が進むおいしさ。セットでも出しているラーメンと同じ和風出汁を配合していることも、ごはんと相性が良い理由かもしれません。ちなみに「てりカツ丼」という名称は、お客さんの「てり焼きみたいなかつ丼」という言葉から、2代目店主さんが命名したそうです。

洋風かつ丼に和風ラーメンが、意外なほど好相性。
ちちや

【住所】土岐市泉町久尻32-11
【営業時間】11:00〜13:30、16:30~19:30LO
【定休日】月曜、第2・4火曜
【TEL】0572-55-3214

詳しい記事は、本誌特集「かつ丼パラダイスGIFU」をチェック!「かつ丼ダイバーシティ協会(KDA)」のメンバーと岐阜のかつ丼文化を考察しているので、こちらもぜひ読んでみてください。

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