杉桶を使った伝統製法でたまり醤油を手がけ、「アイスクリームにかける醤油」や「ふりかける醤油」といったユニークな醤油関連商品も開発している山川醸造が、創業以来2つ目となる新桶を導入。2月13日(金)に行われた新桶清祓い安全祈願祭の様子をお伝えすると共に、なぜ今、木桶を新調するのか?その背景にあるドラマに迫ります。
※2026年2月取材時の情報です

木桶で仕立てるたまり醤油の魅力
醤油は大豆や小麦に麹菌を加えて醤油麴を作り、塩水と麹を混ぜた「もろみ」を熟成させて製造します。醤油の種類によって大豆と小麦の割合は変わりますが、たまりは大豆の割合が大きいのが特徴。色が濃く濃厚なたまり醤油は、うまみたっぷりで赤身の刺身や照り焼きと相性抜群。東海地方のご当地調味料としても知られています。

山川醸造のたまりには小麦がほとんど使われておらず、一際濃厚。グルテンフリーの調味料を探している方の注目も集めているそうです。
木桶の木材には乳酸菌や酵母菌といった多様な微生物が棲みつき、桶の寿命が約100年と言われるなか、長い時間をかけて蔵元オリジナルの生態系を形成。その結果、蔵独自の風味を生み出します。
とりわけ、微生物が定着する前の新しい桶で初めて作られる「初仕込み醤油」は他の木桶の醤油と一線を画す、この時にしか楽しめない希少なものです。
山川醸造では2019年に創立初となる新桶を導入。その桶による「初仕込み醤油」は全国醤油鑑評会で優秀賞に輝きました。

木桶の新調と「木桶職人復活プロジェクト」の深い関係
木桶新調のきっかけとなったのは、絶滅の危機に瀕した木桶製造技術を守るために小豆島の蔵元・ヤマロク醤油が中心となって2011年秋に発足した「木桶職人復活プロジェクト」でした。
江戸時代、和食のベースとなる醤油、味噌、酢、味醂、酒などの調味料は「木桶」で造られていました。ところが、その製造元は減少の一途を辿り、2010年頃には桶の製造を担う桶屋も全国でたった1社に。
木桶づくりの技術と木桶仕込みの味を守るため、興味を持ったメーカーや関係者たちが企業や業界の枠を越えて小豆島に集まり、毎年一月に職人さんの指導のもと、新桶づくりに取り組んでいます。


この想いに賛同した山川醸造は2019年に1つ目の新桶を発注し、社長自ら木桶づくりにも参加。今では、醸造用をはじめ展示用やお風呂桶用など、様々な業界から職人の元へ木桶の注文が寄せられるように。海外のクラフトビール蔵に納品したこともあるそうで、世界的な関心が高まっているのが感じられます。


さらに、「木桶職人復活プロジェクト」によって、木桶醤油界隈にも変化が。木桶醤油を手掛ける企業同士の交流が深まり、「小さなパイを取り合うのではなく、皆で市場を世界へ広げていこう」という機運が上昇。お互いに支え合って木桶醤油を輸出する体制が作られています。

木桶第2号にこめられたこだわり
2つ目の木桶導入のきっかけについて尋ねたところ、当初は既存の木桶の修理を検討していたといいます。ところが、長年プロジェクトを通じて職人さんと関わるうちに、「この人達に新しい桶を作ってもらいたい」という想いが湧き上がったのだとか。
板材には、古くから桶用に用いられてきた上質な吉野杉を採用。丸太から4ヵ所ほどしか採れない希少な部分を使って加工し、桶の形に組み立てていきました。木桶を留める箍(たが)は、小豆島の真竹を割いて編んだもの。職人が厳選した材料で、「木桶職人復活プロジェクト」の参加者と共に、100年先まで使える木桶を作り上げました。

前回作成した桶との大きな違いはそのサイズ。前回は小豆島で一般的に使われている20石(約3,600L)サイズでしたが、今回は桶に人が入る作業もある山川醸造さんの伝統的な製法に合わせて、30石(約5,400L)にスケールアップしました。

「今回は職人さんがうちに来てくれて、『人が入る作業があるなら、横幅を大きくした方が良いかも』という風に、蔵に合ったサイズを提案してくださいました。長年関わってきたからこそ、1つ目の時とはまた違った感慨がありますね」と、次期社長として醸造を学びながら広報等を担う山川華奈子さんが、しみじみと語ってくださいました。
新桶清祓い安全祈願祭と名入れの様子

2月13日(金)10:00から始まった新桶清祓い安全祈願祭の後は、桶の底に名入れを実施。職人さんの名前はもちろん、クラウドファンディング支援者の方の名前も刻まれました。



新桶で仕込んだたまり醤油が完成するのはおよそ2年後。どんな味わいになるのか、今から期待が膨らみます。
山川醸造株式会社
【住所】
岐阜市長良葵町1-9
【営業時間】
8:00~17:00(店舗は9:00~)
【定休日】
日曜、第2・4土曜、祝日
【駐車場】
有
【TEL】
058-231-0951
【HP】
https://yamakawa.tamariya.com/jp
☆随時開催中の蔵見学は要予約(見学時間9:00~12:00、13:30~17:00/所要時間45分/中学生以上1,000円、小学生500円)。5月16・17日には蔵開きを予定。
