7・8月号の巻頭特集では、あつ~い夏に雅な涼をもたらす岐阜の伝統工芸品「岐阜うちわ」をフィーチャー。年表で歴史を辿ったり種類ごとに特徴をまとめたり、うちわ作りの職人さんにインタビューしたり…と、岐阜うちわの魅力をたっぷり深掘りしました。(誌面は↓こちらからもご覧頂けます)
現在の岐阜うちわは「塗りうちわ」「水うちわ」「渋うちわ」の3種類。特に、半透明な扇部に繊細な絵が描かれたなんとも涼しげな「水うちわ」はご存知な方も多いのではないでしょうか。
現在、唯一専業で岐阜うちわを手がける「住井冨次郎商店」でも、水うちわの製作が最盛期を迎える5~6月頃には色とりどりのうちわが竿にささってずらりと並びます。その風景は初夏の風物詩になっており、毎年ニュースや新聞でも取り上げられるほど。
しかしそんな水うちわも、一時期生産中止になったことが。実は今私たちが目にしているのは“復活後”の水うちわなんです。ここではその「水うちわ復活物語」をお届けします。
水うちわ復活物語
水うちわの材料となるのが、雁皮紙という和紙の一種。非常に薄い一方で張りがあって破れにくいという特長が、水うちわのあの繊細さと透明感を生み出しています。かつては謄写版(ガリ版)印刷の原料としても重宝されていましたが、コピー機の台頭によりどんどん需要が減少し、昭和40年代頃にはほとんど生産中止に。その波を受け、水うちわの生産も途絶えてしまいます。そんな中、伝統ある水うちわの復活を目指して奔走したのが、住井冨次郎商店の4代目・住井一成さんでした。
まず必要不可欠なのが、材料の入手。特に生産中止のきっかけにもなった雁皮紙は、そもそもどこなら取り扱っているのか分からないので、知り合いに尋ねたり人づてに聞いたり…とことん聞き込み。そうして雁皮紙を取り扱う紙屋をなんとか発見し、材料の入手に成功しました。
次にうちわのデザイン的魅力の要となる絵柄。塗りうちわ・渋うちわはくっきりとした線で鵜飼の様子を描いたものが主流ですが、水うちわは若い人々に手に取ってもらえるよう、うちわの透明感を引き立たせる淡い色合いで繊細な絵柄を描くことにしました。
こうして課題を一つひとつクリアし、2004年8月、実に13年ぶりに水うちわが復活を遂げたのです。
現在住井冨次郎商店で作っている水うちわの絵柄は、住井さんいわくなんと20種類ほど。さらに青や緑、ピンク…と色展開も豊富なので、お気に入りがきっと見つかるはずです。
多くの人々に愛され、守られてきた岐阜の伝統工芸品「岐阜うちわ」。手軽に便利に涼を得られる時代だからこそ、この夏は“あおぐ”というひと手間を加えて風流な涼を味わいませんか?
住井冨次郎商店
【住所】
岐阜市湊町46
【営業時間・定休日】
鵜飼期間中(5月11日~10月15日) 9:00~19:00、無休
鵜飼期間外 9:00~18:00、日曜休
【問合せ】
058-264-4318