鶏肉や野菜に特製のたれを絡めた鶏ちゃんは、岐阜のご当地グルメの中でも特に有名な一品。この記事では専門店の方にお話を伺いながら、その魅力に迫っていきます。
※2024年11月取材時の情報です

鶏ちゃんってどんな料理?
今回お邪魔したのは下呂市の温泉街にある「お食事処 萩屋ケイちゃん」。長年鶏ちゃんパックを扱ってきたメーカー「萩原チキンセンター」が2023年に開いた鶏ちゃん専門のお食事処です。萩原チキンセンターの代表取締役・日下部(くさかべ)さんは鶏ちゃん好きが集まって普及に努める団体「鶏ちゃん合衆国」の“副大統領 兼 商務長官”も務めています(鶏ちゃん合衆国については後述)。


そんな日下部さんに鶏ちゃんはどのような料理か改めて伺ったところ、
「県外にその魅力を伝えようとしたとき、地元の人にとってその存在が当たり前すぎて、かえって説明するのが難しい、という壁に当たったんです」という意外なお言葉が。
タレにいくつも種類があるのはもちろん、鶏肉も定番のもも肉・むね肉のほか、モツや皮を入れることもあります。また、キャベツなどと一緒に炒めるタイプが多いイメージですが、お店によっては煮ていたり唐揚げにしていたりと調理方法も様々。そんな鶏ちゃんを、一言ではとても表せなかったといいます。
「そこで鶏ちゃん合衆国の皆さんとお店を巡って歴史を紐解き、共通点を探りました」
と、語る日下部さん達がまとめた定義は下記の通り。
1.鶏肉であること
2.一口サイズにカットしてあること
3.タレで味付けしてあること
タレの味も調理方法も決めない自由さに重きをおき、あえてシンプルな定義にしているからこそ、食べれば食べるほど新たな味と出会える懐の広さが伝わってきます。
鶏ちゃんの歴史
もともとは岐阜県北部の郷土料理だった鶏ちゃん。大正・昭和時代には各家庭で鶏を育てており、卵を産まなくなった「廃鶏」を使う料理として考案されたと言われています。当時は貴重なたんぱく源だったので特別な時に振る舞われましたが、1950年代になると精肉店や飲食店でも取り扱われるようになりました。
鶏ちゃんの「ちゃん」については、タレを意味する「醤(じゃん)」が変化したとも、豚肉などの内蔵料理「とんちゃん」が変化したとも言われています。
元々は地域により「味付けかしわ」、「鳥ホルモン」といった呼び名がありましたが、「鶏(ケイ)ちゃん」の名前が定着。パック商品が流通する過程でその名前も広く伝わりました。
発祥が家庭料理なだけあって歴史に関しては謎に包まれている部分が多いので、今後、新たな発見があるかもしれませんね。
鶏ちゃん合衆国の活動
鶏ちゃんの持つ多様性を活かしつつ、おいしさと文化を広めていきたい、という想いをもった方々が集まって生まれた「鶏ちゃん合衆国」は、2024年に12周年を迎えました。鶏ちゃん専門店や食堂、メーカーなどのお店や会社はそれぞれの味に自信と誇りを持つ「州」に、鶏ちゃんの小売りを専門に行う事業者を「自治区」になぞらえて、その地域による多様性を「合衆国」に見立てています。
さらには発起人をはじめとするメンバーが「政府」を組織し、イベントの企画や運営、情報発信を実施。憲法や国旗、国歌、国章なども制定されており、おり、鶏ちゃんを愛する人たちや活動をサポートする人たちは「国民」として、様々な活動に参加できます。
活動に興味が湧いたら、ぜひ下記ホームページを覗いてみてください。特に鶏ちゃんの歴史解説が充実していて、一読の価値アリです!
鶏ちゃん合衆国
お食事処 萩屋ケイちゃんでいざ実食
このお店の特徴は、鶏肉とタレをそれぞれ3種類から選べること。鶏肉は親どり・若どり・奥美濃古地鶏の3種、タレはみそ・しょうゆ・しおの3種、計9パターンの組み合わせを注文することができ、チーズや卵といったトッピングも充実しています。

今回、頂いたのは親どり×みその組み合わせ。ジンギスカン鍋の上にクッキングシートを敷いて、キャベツや玉ねぎなどの野菜と炒める王道スタイル。お肉や野菜を移動させつつじっくりと焼き上げてから頬張ると、噛むほどにしっかりした鶏肉の旨味が溢れてきます。みそダレとの相性もばっちりで、どんどん食べ進められました。
柔らかくジューシーなお肉を味わいたい人は若鶏を、地鶏ならではのおいしさを求めるなら奥美濃古地鶏がおすすめ。他の組み合わせにも挑戦したくなります!

定食セットでは地元産の精米したてご飯や、下呂の食材を使った副菜・漬物など地域の美味も盛りだくさん。地元の酒蔵・天領酒造が造る甘酒を使った「下呂の甘酒ソフト」も優しい甘さで口の中もさっぱりしました。 お店の入り口には洗面台があり、ロッカーも完備されているのでにおい移りが気になる方も安心。気兼ねなく選べるタッチパネル式の注文でFREE Wi-Fiや充電ポートも完備するなど、細やかな気遣いが行き届いているのも嬉しいところです。


岐阜県各地のお店に行ってみたり、パックを購入して作ってみたり…岐阜の豊かな食文化を象徴する鶏ちゃんを堪能して、自分好みの味を探求してくださいね。
お食事処 萩屋ケイちゃん
【住所】
下呂市湯之島547-7 湯之島ビル1F
【営業時間】
11:30~19:30(18:30LO)、土曜は~20:30(19:30LO)
【定休日】
水曜(祝日の場合は翌営業日、不定休あり)
【駐車場】
近隣の有料駐車場を利用
【TEL】
0576-25-5151
【HP】
https://www.hagiya-kchan.co.jp/
【Instagram】
@hagiyak_chan