【9・10月号】岐阜市のソウルフード? 「天ぷら中華」の魅力に迫る!

ちょっとマイナーな岐阜市のご当地グルメ・天ぷら中華をご存じですか?
ネーミングからして既に謎が多いこのメニューの魅力を探るべく、提供されている店舗の1つである岐阜市役所大食堂に。そこでスタッフの明石さん(写真左)と、愛好家団体「天ぷら中華人民共和国」の党員・山本さん(写真右)に色々教えていただきました。

明石さん(左)と山本さん(右)

今回ご紹介するポイントは主に以下の3つ

  1. 天ぷら中華2つの特徴
  2. 消滅の危機と市役所大食堂
  3. 天ぷら中華人民共和国とは?

1.天ぷら中華2つの特徴

1回聞いただけではどんな料理なのか想像できないかもしれませんが、天ぷら中華は読んで字の如く中華そばに天ぷらを載せた料理のこと。さらに短くした「天中」という略称もあるそうです。

ラーメンのようなこってりとした麺に揚げ物を加えたら超オイリーでは?という予想を裏切り、天ぷら中華の麺はあっさりした和風だしをベースにしているのが1つ目の特徴。食べていくうちに天ぷらの油がスープに溶けることで深みが出て、いつの間にかやめられない味わいになっているのです。「中華そば+おかずだとお腹がいっぱい。でもそばだけは寂しいな…という時に食べられるバランス感も魅力。冷やしたぬきそばもだけど、1つの器におかずと主食をまとめる合理的なところに、岐阜らしさが出ているのかも」と、愛好家団体に所属しているだけあって山本さんが熱く語ってくれました。

天ぷら中華

ちなみに、天ぷら中華の誕生はさかのぼること大正時代。普通の中華そばでは物足りないというお客さんがリクエストしたという説や、天ぷらそば・うどんのお店がブームに乗って麺を中華そばに変えてみたという説があります。時代が進んで「高度経済成長期に、これを食べて元気になろう!という感じで広がったのだと思う」と、山本さんは考察。お客さん発なのかお店発なのか、天ぷらが載ったのか麺が変わったのか…はっきりとした由来は分かりませんが、長年愛されてきたことは確かです。

もう1つの大きな特徴は、同じ天ぷら専門店から仕入れたものを使っていたということ。多くの提供店舗では天ぷらを揚げるスペースがなく、とんかつ等を揚げる設備があったとしても、ラードを使っているため天ぷらは作れません。そのため、麺と天ぷらの分業体制が確立されていきました。

2.消滅の危機と市役所大食堂

ところが2020年に最大の危機が訪れます。長年天ぷらを提供していたお店が閉業してしまったのです。お店にとってはコアなファンはいるものの、自前で天ぷら用の設備を整えるほど売り上げを左右するメニューでも無いというのが実情…。こんな理由から、提供をやめる店が増えてしまうのでは?という不安が愛好家たちの間に広がっていきました。

そこで立ち上がったのが、天ぷら中華を愛してやまない団体「天ぷら中華人民共和国」※後述。「自分で天ぷらを用意できる飲食店で提供するしか生き残る道はない」と、新たにメニュー化できそうな飲食店をメンバーで探し始めます。まずは多くの人に天ぷら中華を知ってもらうところから、と目を付けたのが当時オープンしたばかりの市役所大食堂でした。

市役所大食堂

「初めて山本さんから話をいただいたのは2021年の夏。当時はオープンでバタバタしていたのでお断りしていましたが、2月、3月頃になると余裕が出てきたので、お受けすることにしました。いつもは一日10杯ほどですが、メディアで取り上げられると30杯は出ます」と話してくださったのは、市役所大食堂の明石さん。

「天ぷら中華としては邪道かもしれませんが、その都度天ぷらを揚げるのはここならでは。高山ラーメンで有名な老田屋の麺とスープを使っています。また、提供するときはあえて汁に浸さないようにしているのも当店の特徴です。はじめはサクッとした食感を味わってもらって、お好きなタイミングで浸しながら食べるのもおすすめですよ」と、大食堂ならではの魅力を熱く語ります。「他のお店では衣を散らしてボリューミーに見せる花揚げを使うことが多いけど、ここでは棒揚げのえび天に天かすを散りばめて花揚げを再現しているところが素敵だね」と、山本さんも太鼓判を押していました。

花揚げのえび天
ちなみに花揚げのえび天はこんな感じ!
券売機の画面をスライドしていくと一番下に表示されます。実はここが「裏メニュー感というか、天ぷら中華の立ち位置を忠実に再現していて面白い」という山本さん的イチオシポイント。もっとも、食堂側としては各メニューに番号を振っている都合上、最後の方になっただけとのことです。偶然の賜物?

3.天ぷら中華人民共和国とは?

さて、ここまで天ぷら中華について語る中、異彩を放っていたのが「天ぷら中華人民共和国」という愛好家団体の名前でしょう。党員の山本さん曰く、岐阜県各所に乱立しているソウルフードの名を冠したグルメ国家のひとつ「鶏ちゃん合衆国」のカウンターカルチャーとして成立したそうです。2014年には「長良川おんぱく」でのプログラムの一環で提供店を回るツアーも企画。グルメ国家の中では国民の数も少なめですが、天ぷら中華を広めるために日々活動をしています。

「天ぷら中華人民共和国」党員メンバーの方々

まとめ

冷やしたぬきそばや鶏ちゃんが表のソウルフードならば、天ぷら中華は裏ソウルフード。だからこその面白さと奥深さがあります。メニューに載っていなくても注文すると作ってくれるお店もあるそうなので、身近な食堂でも実は提供しているかもしれません。皆さんのおすすめ天ぷら中華がありましたら、ぜひ編集室に情報をお寄せくださいね☆

岐阜市役所大食堂

【住所】
岐阜市司町40-1 岐阜市役所2階
【営業時間】
11:00~19:30LO
【定休日】
無休
【駐車場】
381台※30分ごとに100円(庁舎利用者は2時間まで無料)
【問合わせ】
058-216-3235
【HP】
https://enso.ne.jp/shiyakusho/
※志のだや(岐阜市長良福光2666-3)、大福屋(岐阜市神室町1-12-1)、東亭(岐阜市今町3-18)等でも提供中

【これらの内容はぷらざ9・10号でもご覧いただけます。詳しくは下記をクリック!】

地元の名物グルメ[天ぷら中華]は72ページに掲載しています。

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